こんにちは。元リーマン埼玉 (@saitamawoker)です。
家計の節約やお得な生活なため、ふるさと納税を利用されている方が多いと思います。
今回は、「ふるさと納税のワンストップ特例申請は危険である」というテーマで紹介します。
ふるさと納税のワンストップ申請は、主に確定申告不要の会社員が対象の制度となります。
今回の記事でわかることは次の通りです。
- ワンストップ特例申請はなぜ危険であるか、その理由について
- どのように危険を回避するのか、危険回避の方法について
関連動画は以下です
目次
ふるさと納税「ワンストップ特例制度」とは何か
節約やお得な生活を実現するうえで、定番となっている「ふるさと納税」があります。
会社員の方であれば、ふるさと納税を行い、その後、住民税控除の手続きのため、「ワンストップ特例申請」を利用する方が多いと思います。
ふるさと納税は、本来確定申告により住民税の控除を行うものですが、「会社員で確定申告やったことないよ」という方や、「確定申告の手続きが面倒だよ」という方が多いため「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が2015年に創設されました。
これにより、会社員でも確定申告不要でふるさと納税を行えるようになり、ふるさと納税が会社員の方にも身近になり、爆発的な市場成長に繋がりました。
ワンストップ特例申請の利用条件は次の3つです。
- もともと確定申告や住民税申告をする必要のない給与所得者等であること
- ふるさと納税以外に確定申告または住民税の申告を行う必要がない方
- 年間寄付先が5自治体以内の人
上記3つに該当する必要があります。
該当する方は、ふるさと納税で寄付した自治体から送付されてくるワンストップ特例申請書と本人確認書類を送り返せば、住民税控除の手続きは完了です。
なお、最近では、ふるさと納税サービスを展開している「さとふる」でワンストップ特例申請の電子申請が可能となっています。
具体的には、スマホとマイナンバーカードで申請が完結し、ペーパーレスになりました。
〇さとふるアプリdeワンストップ申請
なぜ、ワンストップ特例申請が危険なのか
結論から述べると、住民税控除が「されない」リスクがある、ということです。
大きく要因を分けると、
- 「ワンストップ特例申請を行った人のミス」
- 「自治体職員の処理ミス」
に分けられます。
「ワンストップ特例申請を行った人」のミスがある
まず、前提として、ワンストップ特例申請の注意点として、下記があります。
- 年間寄付先が5自治体以内である必要がある
- 寄付を行った回数分、ワンストップ特例申請書の提出が必要
- 「寄附金税額控除に係る申告特例申請書(ワンストップ特例申請書)」の送付締切に注意(主に1月10日)
- 申込内容が変わった場合は期限までに申請事項変更届出書の提出が必要
- 確定申告を行うとワンストップ特例制度による申請は無効
「ワンストップ特例申請を行った人のミス」の要因の1つとして、「⑤確定申告を行うとワンストップ特例制度による申請は無効」があります。
例えば、ワンストップ特例申請で5万円の寄付金控除の申請を行った後に、副業の事業所得や株式の配当控除、医療費控除など別の理由で確定申告を行う必要があるとします。
この時に、寄付金控除を記入忘れたり、実際に寄付した5万円ではなく3万円と記載した場合は、確定申告書類に記入した金額で寄付金控除が適用されることになります。
すなわち、確定申告に寄付金控除を未記入であれば、実際に寄付を行っていても住民税控除はされません。
これがリスクの1つの要因「ワンストップ特例申請を行った人のミス」となります。
「自治体職員」の処理ミスがある
そして、もう1つ、クリティカルな要因として、「自治体職員のミスなどで、申請手続きがされないケースがある」ということです。
これは、毎年のようにニュース等で取り上げられています。
要は、皆さんがワンストップ特例申請書類を不備なく自治体に送付したのに、自治体のミスで申請の受付処理がされておらず、毎年6月頃に決定される「住民税」から寄付の控除がされていないということです。
ニュースになってミスの状況が表に出れば、住民税控除の手続きが後ほどされますが、表に出ない場合は住民税が控除されないまま、時が過ぎる可能性があります。
なぜこのような事態が発生するのか紹介します。
ふるさと納税市場と自治体職員の状況、そして、ワンストップ特例申請を自治体に送付した後、自治体職員がどのような作業を行っているのかがわかれば、この事態を理解できます。
ふるさと納税市場は拡大一方
年度 | 金額(億円) | 成長率 | 件数(万件) | 成長率 |
H20 | 81.4 | 5.4 | ||
H21 | 77.0 | -5.4% | 5.6 | 3.7% |
H22 | 102.2 | 32.7% | 8.0 | 42.9% |
H23 | 121.6 | 19.0% | 10.1 | 26.3% |
H24 | 104.1 | -14.4% | 12.2 | 20.8% |
H25 | 145.6 | 39.9% | 42.7 | 250.0% |
H26 | 388.5 | 166.8% | 191.3 | 348.0% |
H27 | 1652.9 | 325.5% | 726.0 | 279.5% |
H28 | 2844.1 | 72.1% | 1771.1 | 144.0% |
H29 | 3653.2 | 28.4% | 1730.2 | -2.3% |
H30 | 5127.1 | 40.3% | 2322.4 | 34.2% |
R1 | 4875.4 | -4.9% | 2333.6 | 0.5% |
R2 | 6724.9 | 37.9% | 3488.8 | 49.5% |
R3 | 8302.4 | 23.5% | 4447.3 | 27.5% |
まず、ふるさと納税市場です。
毎年のように拡大成長の市場です。
総務省による「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」によると、令和3年度の実績は、受入額約8,300億円、寄付件数約4,447万件です。
受入額は、前年の約120%、寄付件数は約130%です。
毎年のように、市場が約20~30%成長しています。
したがって、業務量は毎年のように増加する一方です。
自治体職員の担当人数は少ない
続いて、自治体職員の状況です。
業務量は毎年増加する一方で少ない職員で短期間の納期で処理しなければなりません。
ふるさと納税を担当する部署は自治体により様々です。
商工課や観光課、総務課、税務課、広報ブランド推進等の部署などが担当します。
その中で、ふるさと納税を担当する職員は、1名から2名というのが大半です。
もちろん、3名以上や臨時職員を含めて対応している自治体もあります。
団体名 | 受入額(百万円) | 受入件数(件) |
北海道紋別市 | 15,297 | 1,105,051 |
宮崎県都城市 | 14,616 | 695,351 |
北海道根室市 | 14,605 | 774,308 |
北海道白糠町 | 12,522 | 827,301 |
大阪府泉佐野市 | 11,347 | 894,137 |
宮崎県都農町 | 10,945 | 562,727 |
兵庫県洲本市 | 7,842 | 583,982 |
福井県敦賀市 | 7,722 | 445,917 |
山梨県富士吉田市 | 7,214 | 266,946 |
福岡県飯塚市 | 6,564 | 574,043 |
静岡県焼津市 | 6,485 | 394,060 |
兵庫県加西市 | 6,456 | 157,040 |
京都府京都市 | 6,239 | 111,469 |
北海道弟子屈町 | 5,861 | 300,490 |
鹿児島県志布志市 | 5,298 | 237,917 |
佐賀県唐津市 | 5,030 | 306,525 |
茨城県境町 | 4,886 | 289,464 |
和歌山県有田市 | 4,872 | 404,711 |
滋賀県近江八幡市 | 4,786 | 131,550 |
佐賀県上峰町 | 4,558 | 286,989 |
令和3年度の受入件数トップの北海道紋別市は、寄付件数が110万5,501件でした。
そのうち、ワンストップ特例申請書の件数は59万3,903件でした。
ふるさと納税のピークは12月下旬です。
申請書類も12月から締め切りの1月10日にかけて多く届きます。
そして、住民税控除手続きのための自治体による処理期限は、1月末となっています。
紋別市は外部委託している可能性がありますが、多くの自治体は、多くの書類を少ない職員で1月の年明けから1月末までに処理しなければなりません。
したがって、業務量は毎年増加する一方で少ない職員で短期間の納期で処理しなければなりません。
自治体職員の作業内容は結構大変
最後に自治体職員の作業内容です。
ミスが発生しやすい作業です。
作業内容は、主に1月下旬までに寄付者の氏名や寄付した金額をcsvのデータ化を行い、1月末までに税務処理のシステムに登録する流れです。
したがって、紙の書類の受付処理、紙からデータ化、さらにデータの取りまとめ作業があり、事務処理能力やある程度Excelなどのスキルがないと、処理ミスやデータ破損等のリスクがあります。
以上が、「自治体職員の処理ミス」の複合的な要因となります。
申請が紙ではなく、電子化されれば問題は解消されるのでは?というご意見もあると思います。
結論から申し上げますと、紙の処理ミスはなくなりますが、電子データの扱いミスは変わらず発生する可能性があります。
主な理由は次の通りです。
ふるさと納税を受付するサイトは、「ふるさとチョイス」「楽天」「さとふる」など複数存在しています。
自治体によって5サイト以上扱っている自治体もあります。
各サイトからデータをダウンロードして取りまとめるので、なかなかヒューマンエラーのミスを完全に防ぐのは難しいからです。
さらに、自治体職員は数年間で担当で変わるため、Excel等の処理能力が高くない人も担当します。
これもヒューマンエラーの発生要因です。
危険を回避するにはどうすればよいか
- 確定申告を行う ← これが安全
- 毎年6月頃に通知される「住民税決定通知書」を確認する ←住民税控除漏れを検知できる
結論ですが、危険回避の方法は、確定申告を行うの一択です。
しかし、ワンストップ特例申請を行い、住民税控除が問題なくされているか確認する方法もあります。
毎年6月頃に通知される「住民税決定通知書」で前年に寄付した金額が間違いなく住民税控除されているかチェックします。
ここで控除されていなければ、自治体に問い合せし修正手続きに進んでいたければと思います。
確定申告は慣れれば簡単です。
ふるさと納税による寄付金控除の手続きは、ワンストップ特例申請の手続きと大きく変わりません。
確定申告書類に、会社からの年末調整で記載されている、収入や社会保険料など転記する必要がありますが、寄付金控除も同様に合計金額等を記載する程度です。
詳しい計算や手続きは、税務署や税理士さんにご確認いただければと思います。
まとめ
- ふるさと納税「ワンストップ特例制度」とは何か
- 確定申告を行わなくても、ふるさと納税の寄付金控除を受けられる便利な仕組みです
- なぜ、ワンストップ特例申請が危険なのか
- 住民税控除がされないリスクがあります。
- 「申請した自分のミス」と「申請した自分以外の自治体職員による処理ミス」があるからです。
- 特に「自治体職員による処理ミス」は申請者側では防ぎようがありません。
- 危険を回避するにはどうすればよいか
- 確定申告で寄付金控除を行うことです。
- また、ワンストップ特例申請を行った場合は、毎年6月の住民税決定通知書で控除額が正しいかも確認します。問題があれば自治体にお問い合わせください。
以上です。